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  • 国際協力の今と未来
  • 適応

SDGs時代における、適応への新たなアプローチ:アジア地域のニーズと優先事項

主催者

  • 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

イベント概要

持続可能な開発のための2030アジェンダとその具体的な目標である17のSDGsは、様々な環境、社会、経済問題の密接不可分性に焦点を当て、SDGs間のシナジーを最大化し、トレードオフを克服することによって、適応を含む複数の課題に同時に対処する統合的取り組みを要請している。
アジア地域のニーズと優先事項を焦点に、本イベントでは、変革と持続可能な開発を実現するために、SDGsの統合的取り組みとパートナーシップの強化という理念に沿って、新たな統合的課題解決のアプローチを含め、求められる適応行動のあり方について議論する。地域間協力とパートナーシップは、現場における適応行動の実践を推進し、効果的な意思決定を促す科学と政策のインターフェイスを強化するうえで重要な手段となりうる。本イベントでは、次の設問に沿って議論する。(1)アジアの現場における適応行動と災害リスク管理の取り組みから学んだ重要な教訓は何か? (2)情報・知識に関するパートナーシップを強化し、統合的に適応と防災への意思決定と投資を促進するために、グローバルな枠組み、特にSDGsをどのように活用できるか? (3)適応において地域間協力はなぜ必要なのか?どのように気候変動の脅威に対処し、新たな取り組みを拡大できるのか?それはどのように統合的な形で地域のレジリエンスの構築に貢献できるのか?

登壇者

  • 武内 和彦 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 理事長
  • 水野 理 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 研究統括ディレクター
  • サリム・ハク 国際環境開発研究所/国際気候変動開発センター シニアフェロー/センター長
  • フン・チャン 韓国環境研究所 韓国気候変動適応センター センター長
  • サム・ティ カンボジア環境省気候変動局 局長
  • アリフ・ウィボウォ インドネシア環境林業省気候変動総局気候変動適応局 副局長
  • アルニコ・パンダイ 国際総合山岳開発センター 地域プログラムマネージャー
  • ビナヤ・ラズ・シバコティ 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 主任研究員

配布資料

セッションサマリー

SDGs枠組みの重要なメッセージに、「多様な問題に取り組むため、相乗効果を高め、さまざまな取り組みのトレードオフを減少させるための統合的アプローチをさらに検討する必要がある」というものがあり、すべての社会・経済・環境の問題の密接な相互関係を示している。第五次環境基本計画にある地域循環共生圏(Regional Circular and Ecological Sphere:Regional CES)といった革新的概念は、SDGsが提案する統合的アプローチを可能にするという展望を強調しており、日本における環境に関する方針全ての基本理念となっている。地域循環共生圏は、同時に複数の問題に対処するための地域循環経済および環境の創造を目指しており、SDGsと気候変動適応(CCA)を実施するための将来の努力に向けた良い参考となる。CCAへの将来的な努力に関しては、SDGsの理念および地域循環共生圏といった統合概念から多くを学び取ることができ、事実、20の目標(SDGsの17目標+仙台防災(DRR)枠組みの災害に関する目標1つ+パリ協定から気候変動緩和と適応に関する目標2つ)を考慮することが提案されている。
セッション参加者は、DRRとCCAの統合の経験に関して議論を行った。IGESは、科学と政策を関連させた3つのプロジェクトのケース(①フィリピンのラグナ湖流域での地域レベルでのDRRとCCAの統合、②ASEAN諸国のDRRとCCAの統合、③社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープのレジリエンス強化に向けたSatoyamaイニチアチブ)を紹介した。
セッション参加者は、CCAとDRRの統合に関する議論において、アジア太平洋地域が他の地域よりも進んでおり、アジア太平洋地域適応ネットワーク(APAN)といったネットワークが地域協力を促す手段となっていることを確認した。
サリム・ハク博士によると、バングラデシュでは気候変動適応戦略を10年前に策定しており、それ以来、国家財源からDRRとCCAに毎年100USD(これまでに10億ドル)を投資し、現在50以上の大学を結びつけてDRRとCCAに役立つ研究成果を特定している。またサリム・ハク博士は、DRR、CCA、またはSDG以外にも、IPCC 1.5度特別報告書からの緊急警告やアジア各地での災害発生の増加を考慮して、損失と被害(loss and damage)について検討する必要性を強調した。
フン・チャン博士は、CCAは気候変動の影響に対応する能力を高めると話す一方、まず、我々自身がCCA、DRR、緩和、あるいは単に開発を行っているのかを明確にする必要があると語っている。また、大部分の国々において、それぞれ異なる予算の流れによって引き起こされる非効率性に対処するため、CCA、DRR、緩和、および特に地方レベルのSDGsの包括的なアプローチの必要性を強調している。
共通のリスクに対処するための分野横断的計画と、相乗効果を最大化するために日本が提案した、AP-PLATパートナーシップのような強力な地域協力が必要である。アリフ・ウィボウォ氏によると、インドネシアでは既にSDG、CCA、DRRについて具体的な措置を講じているということであった。インドネシアでは、SDGの大統領令を制定しており、DRRとCCAの全国的なタスクフォースといったように、すべてのレベルでDRRとCCAのための適切な調整が実施されている。また、国レベル、州レベル、および地方レベルでのCCAおよびDRRに関する技術ガイドラインも策定されている。
サム・ティ氏は、後発開発途上国であるカンボジアは、気候変動の影響に対して非常に脆弱であると述べている。カンボジア政府は、年間予算と計画にCCAを統合し、CCAの主流化を地方およびコミュニティレベルにまで落とし込むことを始めている。地域協力は、CCAやSDGsの統合に非常に重要であり、カンボジアでは、それを実行可能にするためにSDGを地域に適用する過程にある。
アルニコ・パンダイ博士は、ジオハザードを除き、その他すべての災害は気候変動の影響に関連していると述べている。 ICIMODは、上流から下流への早期警戒の送信を国間で行うなど、横断的協力の構築経験があり、HYMAP(ヒンドゥークシヒマラヤ地域の地域評価)は地域協力のもう一つの例である。また、当該地域でスローモーション健康災害として認識されている大気汚染を例に挙げて、緩和と適応の統合の必要性を強調している。
ビナヤ・ラズ・シバコティ博士は、DRR、CCA、およびSDGsに関する地域協力の重要な分野として、この地域の国々が、融資可能なプロジェクト、プログラム、および行動を設計・拡大できるための、キャパシティビルディングの重要性を強調した。DRRとCCAのキャパシティビルディングに投資することで、損失と損害を最小限に抑えることができる。
サリム・ハク博士は、現場レベルでのCCAとDRRのニーズとイニシアチブを理解するためには、対面コミュニケーションに代わるものはないとし、専門家よりも実際に業務を行っている人々から多くを学ぶ必要があると述べている。 全ての国は、それぞれ学びまたは教えることができ、国および地域の機関を結び付けることは、ノウハウを共有したり利害関係者を巻き込むための効果的なメカニズムとなり得る。

セッション終了に際し、水野理氏は、ディスカッションからの3つの重要なメッセージを強調した。
1)奨励されている統合的アプローチを促すという総意があり、それに向けた多くの努力が既に行われている。CCAおよびSDGsの、新たな道筋またはアプローチの発見に役立つものである。
2)参加者全員が地域協力とパートナーシップの重要性を強調し、様々な方策を共有した。パートナーシップは対面コミュニケーションを通じて可能であること、情報プラットフォームを最大限に利用すべきこと、そして、地域機関が重要な役割を果たすことができること、を確認した。同時に、女性、子供、障がい者、そして適応および損害と被害の対処において脆弱なグループに対し、それらの見解や懸念を主流化することを十分に考慮に入れるべきである。
3)適応の統合的アプローチを容易にするためには、情報およびノウハウの共有が重要である。科学的な評価だけでなく、地域のニーズをサポートするためのガイドラインとツールも必要である。

その他残したいメッセージやイベントにおける成果

聴衆からのジェンダー問題の主流化についての質問に答えるかたちで、セッション参加者は、女性だけでなく子供や他の脆弱なグループも考慮に入れる必要があると述べた。また、プロジェクトを設計する際には、ジェンダーに関する適応行動がなければ完了とならないため、ジェンダー問題が通常考慮される。一方、ジェンダー問題はデフォルトであり、プロジェクト提案や行動計画で明確に言及されているかどうかにかかわらず、分離することはできないという意見もあった。大多数の受益者とCCAとDRRの介入のターゲットグループが女性であるということが判明するのはよくあることである。

登壇者写真1
登壇者写真2
登壇者写真3
パネルディスカッション写真

2018.12.13のタイムテーブル

  • 国際協力の今と未来
  • 適応

SDGs時代における、適応への新たなアプローチ:アジア地域のニーズと優先事項

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

  • 日本の目指す脱炭素社会
  • ビジネス変革
  • ライフスタイル変革

地域から広げる「公正な移行」~「環境と社会・経済の統合的向上」の実現のために~

日本労働組合総連合会(連合)

  • 技術革新
  • 国際協力の今と未来

生態系に配慮したアプローチによるREDDプラスの実施

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/国際林業研究センター

  • 国際協力の今と未来

東南アジアにおけるNDCの実施と準備に向けて‐能力強化と域内相互協力の役割-

JICA/TGO(タイ温室効果ガス管理機構)/OECC/IGES

  • 国際協力の今と未来

生態系を基盤とした適応(EbA)10年間の歩み:先導的政府や効果的取り組み

ドイツ連邦環境省 国際気候イニシアチブ