イベントスケジュール - COP25 JAPAN PAVILION
2019.12.06
「私たちの」長期戦略は1.5℃の社会を実現できるのか?
主催者
- 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
- イタリア共和国経済振興省・新技術エネルギー環境局(ENEA)
イベント概要
イベントプログラム
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15:45 - 15:55 イベントの概要(10分)
甲斐沼 美紀子 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 研究顧問 -
15:55 - 16:20 IPCC特別報告書のキーメッセージ(25分)
ジム・スキー IPCC第3作業部会 共同議長 -
16:20 - 16:35 脱炭素に向けた長期戦略の役割(15分)
田村 堅太郎 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 気候変動とエネルギー領域 プログラムディレクター -
16:35 - 17:15 パネルディスカッション 「私たちの」長期戦略は1.5℃の社会を実現できるのか?(40分)
パネリスト:
- リザルディー・ボアー ボゴール農業大学 教授
- ホー・チン・シオン マレーシア工科大学 教授
- ジャン・シャルル・ウーカード フランス・環境・開発国際センター
- ヴォルフガング・オーバーガッセル ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所
- ハンス・ヨルン・ヴェディゲ ティッセンクルップ社 エネルギー・環境及び気候 政策グループコーディネーター
モデレーター:甲斐沼 美紀子 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 研究顧問
登壇者
- 甲斐沼 美紀子 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 研究顧問
- ジム・スキー IPCC第3作業部会 共同議長
- 田村 堅太郎 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 気候変動とエネルギー領域 プログラムディレクター
- リザルディー・ボアー ボゴール農業大学 教授
- ホー・チン・シオン マレーシア工科大学 教授
- ジャン・シャルル・ウーカード フランス・環境・開発国際センター
- ヴォルフガング オーバーガッセル ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所
- ハンス・ヨルン・ヴェディゲ ティッセンクルップ社 エネルギー・環境及び気候 政策グループコーディネーター
セッションサマリー
IGES甲斐沼美紀子研究顧問による導入の後、IPCC第三作業部会Jim Skea共同議長とIGES田村プログラムディレクターの発表があり、それに続きパネルディスカッションがあった。パネリストはボゴール農業大学のRizaldi Boer教授、マレーシア工科大学のHo Chin Siong教授、フランス・環境・開発国際センター(CIRED)のJean-Charles Hourcade博士、ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所(WI)のWolfgang Obergassel博士、Thyssenkrupp社のHans-Jörn Weddige博士の5名で、甲斐沼研究顧問がモデレーターを務めた。
発表
Jim Skea教授からは、1.5℃特別報告書と土地関係特別報告書の紹介があった。1.5℃特別報告書が示す1.5℃への4つのシナリオについて、それを実現するには、早急で広範囲なシステム変革が必要であること。また、土地利用との競合があることの説明があった。また、土地関連報告書が示す28の対策の説明があった。どの対策も、緩和、適応、砂漠化、土地劣化と食料安全保障に対する対策として有効に働くとの説明があった。最後にAR6に向けた課題に関連して、統合評価モデルはCDRに依存し過ぎていること、自然に根差した解決に対する明示的な扱いに欠けているとの指摘があった。また、1.5℃世界の実現可能性について、スケールとスピードが必要であることの指摘があった。
田村プログラムディレクターからは、長期戦略の役割として、グローバルな目標をそれぞれの国の文脈で捉える、また、ビジネスに対しては既存のビジネスモデルを、投資家に対しては投資ポートフォリオを長期戦略に整合するものに変えていく機会を提供する、さらに、長期目標を契機に短・中期の行動(NDC含む)との整合性をはかっていくべき、との指摘があった。また、日本の地方自治体において、9都道府県、18市町村が2050年ネットゼロを宣言していることが紹介された。
パネルディスカッション
Rizaldi Boer教授は、インドネシアの現在のNDCの目標値から判断するに、1.5℃目標の実現はかなりの努力が必要であると述べたうえで、研究成果として、1.5℃目標を実現する3つのシナリオ(①AFOLU+再エネ、②AFOLU+再エネ+CCS、③AFOLU+産業構造変化(産業をよりサービスセクターにシフトする)について説明した。
最後にエネルギー部門の転換と土地ベースの緩和の課題への言及があった。エネルギー部門の転換の課題として、価格の安い化石燃料との競争やインフラが十分に整っていないことにより、再生可能エネルギーの普及促進が限定されていること、また、石炭関連産業を維持するとの検討がなされており、国内にて石炭関連設備が座礁資産になるとの認識が進んでいないことが挙げられた。また、土地ベースの緩和課題として、土地や森林管理の改善には大きな投資と構造変化が必要であること、生産性のない土地の利用を最適化することが、特に土地保有権に対して大きな問題の一つであること、劣化した土地での材木プランテーションを加速するインセンティブ制度、作物の収量を改善し、土地利用を効果的に行い、さらに食品ロスを減らすこと、が挙げられた。
マレーシア工科大学のHo Chin Siong教授からは科学を実装につなげるため、気候アクションプランを主流にしていく必要性についての紹介があった。マレーシアでは、イスカンダール・マレーシアを端緒に、クアラルンプール等いくつかの都市で、低炭素シナリオを作成し、これをもとにアクションプランを作って具体的な取り組みを進めている。リープフロッグ発展、国際協力、ステークホルダーの協働の重要性が強調された。
CIREDのJean-Charles Hourcade博士は、博士らが最近発表した“Achieving a Safer and Fairer World, A Climate Finance Initiative” の内容を説明した。脱炭素社会の実現にあたり、投資が脱炭素インフラや行動に向かう必要があるが、その方向に向かっておらず、実際には相変わらず不動産に向かっている。そのためパリの不動産は高いが、アフリカでの脱炭素への投資は進行していない。どうすればよいのか?そのためには、リスクを回避するための低炭素への政府の保証がいる、との説明があった。
また、既存の公的資源を用いて低炭素投資をもっとスケールアップすること、世界の貯蓄の0.6%を低炭素投資に振り向けること、信用格付けの低い発展途上国に向けて、彼らがより低コストのファイナンスにアクセスできるようにすること、発展途上国と先進国の双方で短期的な成長を加速することが重要であるとの指摘があった。
WIのWolfgang Obergassel博士からは、ドイツの交通部門の温室効果ガス排出量は、まだ1990年レベルであり、改善には従来型のパラダイム(交通の拡大。大量輸送。大型車)からの脱却が必要との説明があった。また、1.5/2℃目標の達成には、(長期目標等による)ビジョンを共有したうえで、あらゆるセクターでの根本的な変革が必要であり、セクター毎の削減目標と削減努力の見える化、また、ステークホルダーの参画が不可欠であると述べた。
Thyssenkrupp社のHans-Jörn Weddige博士は、Thyssenkrupp社が2050年に脱炭素を実現する取り組みについて紹介した。具体的には鉄鋼生産に水素を導入し、また再生可能エネルギーを用いて電気分解によってグリーン水素を製造し、また化学プラントへと応用するもので、技術的にはほとんど確立している。こうした取り組みを世界に広げていくため、現在交渉の焦点となっている6条の議論の行方に注目しているとの言及があった。
2019.12.06 FRI のタイムテーブル
気候変動と海洋-宇宙技術の貢献―
笹川平和財団
「自国が決定する貢献(NDC)」の向上に向けたアプローチ、機会、オプション
JICA (WRI UNDP)
「私たちの」長期戦略は1.5℃の社会を実現できるのか?
公益財団法人 地球環境戦略研究機関 (IGES)