再生可能エネルギー100%の社会の実現に向けて-日本のマルチステークホルダーの取り組み-
© CAN-Japan, 2018
本シンポジウムは8月23日に、外務省・環境省・日本気候リーダーズパートナーシップ(Japan-CLP)・イクレイ日本・CAN-Japanが主催し、日本で初めて自然エネルギー100%大学を目指すことを打ち出した千葉商科大学において開催されました。定員500名の会場がほぼ満席となった熱気あふれる雰囲気なかで、政府・地方自治体・企業・NGOのマルチステークホルダーがそれぞれの立場を超えて、パリ協定の目標達成のためにタラノア対話に取り組むという画期的な試みが行われました。再生可能エネルギーの導入において先進的な取り組みを行っている国内外のステークホルダーが登壇し、日本における再生可能エネルギーへの転換に向けて、「今どこにいるのか?」、「どこに行きたいのか?」、「どうやって行くのか?」の3つの問いを念頭に、各界の取り組みを加速させるための活発な議論が交わされました。
基調講演ではCANインターナショナル エネルギー転換担当代表のラッセ・ブルーン氏が登壇し、気候変動がわれわれの社会に対して、喫緊の脅威となっている現状について認識を共有しました。また日本のポテンシャルについて言及するとともに、日本のさらなる取り組み加速への期待を述べました。
パネル討論1:「再生可能エネルギー100%宣言の国内外の動向の最前線」では、既に脱炭素に向けた宣言を公表している先駆的なグローバル企業・自治体・大学からパネリストが登壇し、宣言までの経緯や、宣言後に起こった変化、宣言によるメリットなど、それぞれの経験を共有しました。脱炭素化は1つの組織だけでは実現できない野心的な目標であること、宣言が他のステークホルダーへの呼びかけとなり具体的な行動のためのつながりが拡大していくこと、持続可能な地域・組織運営のためのブランド戦略、優秀な人材の確保、経済合理性などの観点からの必然であることが紹介されました。そして、多くのステークホルダーが参加することで、日本における再生可能エネルギーの経済合理性がさらに高まり、需要サイドと供給サイドによる"商い"のちからが、脱炭素化の動きを加速させていくとの認識が共有されました。
パネル討論2:「エネルギー転換の加速に向けて」では、日本の脱炭素化を牽引する新電力や住宅総合メーカー・自治体・政府が登壇し、再生可能エネルギーの普及に向けたソリューションについて活発な意見が交換されました。日本における再生可能エネルギーの発電量が依然として少ないこと、価格が依然として高いことなどの課題が共有されたのち、企業パネリストからは、再生可能エネルギーのより一層の普及と脱炭素化のためには、これまでのようなCSRの延長ではなく、それぞれの企業が本業(自社ビジネスの中核)として取り組んでいくことの重要性が指摘されました。さらに自治体からは、脱炭素社会を目指す大きな動きとして、RE100加盟企業群が参画する環境モデルゾーンの形成や再生可能エネルギーの生産地と消費地をつなぐ広域連携などの具体的な構想が紹介されました。
シンポジウム全体を通して、パートナーシップとネットワーキングによる課題解決の重要性が再認識され、タラノア対話の手法やプロセスを活用することで脱炭素社会の実現が加速することへの期待が共有されました。
当日の資料は、こちらからご覧ください。
シンポジウム再生可能エネルギー100%の社会の実現に向けて
当日プログラム
- 主催者代表挨拶 中根一幸 外務省 外務副大臣
- 歓迎の挨拶 原科幸彦 千葉商科大学 学長
- 基調講演 ラッセ・ブルーン CANインターナショナル エネルギー転換担当代表
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パネル討論1:「再生可能エネルギー100%宣言の国内外の動向の最前線」
- <パネリスト>
- 北島 敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 代表取締役 ジェネラルカウンセル
- ルーカス・セイファート
- エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
- 原科 幸彦 千葉商科大学 学長
- 中島 恵理 長野県 副知事
- 三宅 香 イオン株式会社 執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当
- <ファシリテーター>
- 大塚 隆志 イクレイ日本 顧問 / 地球環境戦略研究機関(IGES) 上席研究員
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パネル討論2: 「エネルギー転換の加速に向けて」
- <パネリスト>
- 磯野 久美子 自然電力グループ コーポレートサービス統括部門 責任者
- 大倉 紀彰 横浜市 温暖化対策統括本部企画調整部担当部長
- ニコラ・ガイガー ロクシタンジャポン株式会社 代表取締役社長
- 小山 勝弘 大和ハウス工業株式会社 環境部長
- 孫崎 馨 外務省 国際協力局気候変動課課長
- <ファシリテーター>
- 平田仁子 CAN-Japan 代表/気候ネットワーク理事
- 閉会の挨拶 笹川博義 環境省 環境大臣政務官