AP-PLATパートナーシップの構築(~科学的知見を活用した適応アクションに向けて~)
主催者
- 環境省
- 国立環境研究所
イベント概要
各国・地域の気候変動に対する脆弱リスクを減らし強靱性を高めること、及びそのための適応能力強化が国際的な目標となっている。
我が国では、気候変動適応法を今年6月に成立させ、国内外における気候変動への適応の推進を主導していく。国際的な貢献として、COP22にて、日本の気候変動対策イニシアティブとして、アジア太平洋地域の気候リスク情報やデータセット等の情報基盤である「アジア太平洋適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」を2020年までに構築することを発表した。国立環境研究所を事務局として、「科学的知見」、「適応ツール」、「人材育成」を三本柱に据えて準備を進める。気候リスク情報を活用して途上国における適応計画等の政策や適応アクションにつなげることを目的としている。本サイドイベントでは、AP-PLAT構築に向けたパートナー諸国、研究・開発機関を迎え、AP PLATを用いた実践的な適応活動の実現・推進に向けて、課題と展望について検討する。
登壇者
- 高橋康夫 日本環境省 地球環境審議官
- メドリル インドネシア政府国家開発計画庁 局長
- アサモン・リムサクル タイ天然資源環境省(環境研究研修センター) 室長 プレゼン資料(PDF, 449KB)
- シャンフ・ルー ADB持続的発展・気候変動局 気候変動適応シニア専門家 プレゼン資料(PDF, 1.3MB)
- モザハラル・アラム UNEPアジア太平洋事務所(APAN事務局) 地域コーディネーター
- 行木 美弥 日本国立環境研究所 次長 プレゼン資料(PDF, 2.7MB)
- 水野 理 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) プリンシパル・フェロー
配布資料
セッションサマリー
セッションでは、AP-PLATがどのように科学的知見を構築していくか、そしてAP-PLATパートナーシップを通じ、気候資金アクセスを含め、どのように効果的に適応計画・実施を推進し能力強化につなげるかが議論された。パネルディスカッションのモデレーターは、UNEP ROAPのアラム氏(気候変動サブプログラム地域コーディネーター)が務めた。
国環研の行木次長からは、AP-PLAT構築の進捗状況が共有され、現在版のデモンストレーションとともに、オンライン情報の各機能について紹介された。
環境省の杉本室長は、AP-PLATのデータ・情報を通じて気候変動リスクに配慮した政策立案及び資金決定につなげていくことを目指す「AP-PLATパートナーシップ」の構想を説明。有用情報を提供するだけでなく、多様な関係機関がお互いの強みを生かし業務提携を発展させ、科学的知識、適応ツール、能力強化の柱を強化して目的を達成する流れを強調した。
インドネシアBAPPENASのメドリル局長とタイERTCのアサモン氏は、自国で進められてきた情報基盤整備と適応計画策定への活用について経験を共有し、AP-PLATパートナーシップを通じた各国・地域レベルとの協力について要望した。またADBのシャンフ・ルー氏より、各部門の案件形成に寄与するための各国・地方の気候変動影響評価や経済社会情報のプロファイル作成について、ADBの開発状況が説明された。
IGESの水野氏は、AP-PLATパートナーシップの目的実現のためには、各国内の主要機関の能力と連帯強化が重要であること、また適応策には地域の状況を理解して進める参加型アプローチが適用されるべきであることを、IGESの経験を通じ説明した。
最後に、環境省の高橋地球審より、各パネラーの挙げた重要なイシューやコメントに感謝の意が示されるとともに、パートナーシップを通じた有効な施策形成と適応行動の実現に向けた決意が表明された。
その他残したいメッセージやイベントにおける成果
a. 「開発分野」に気候変動適応を取り入れるには、ニーズとエビデンスに基づいた計画づくりが必要。 ハザード情報を含めた気候影響シナリオ/予測の改善がその支えとなり得る。
b. 気候変動だけでなく開発分野のダイナミックな動きも抑えて、中期・長期的な強靭化計画に向けていく必要がある。
c. 地方レベルでの科学情報の運用は、地方の言語や使用者に合わせたパッケージについて考慮する必要がある。
d. ADBで開発してきた国レベルの気候プロファイルは、気候変動、開発の両分野にとって有益な情報リソースとなり得る。
e. AP-PLATのオンライン情報は、国政府、開発機関、研究機関等の様々な主体からの情報を取り込むための柔軟性と補完性を兼ねそろえておく必要があるだろう。
f. それぞれの国/地方、分野別の多様な主体を能力強化していく必要があり、AP-PLATの各パートナー機関はそのための非常に重要な要素である。
g. 現在各国で進められているNAP、NDCs等との連携、互恵的な能力強化も重要な要素である。