15:00 - 16:30
タイトル | NDCとSDGsとのリンケージ - シナジーとトレード・オフ |
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イベント概要 | パリ協定に基づいて温暖化対策を推進し、脱炭素社会への変遷を確実なものとするには、長期的な目標と短・中期の具体的な政策目標とのリンクが重要である。2017年8月現在、155件(182ヵ国)の「自国が決定する貢献(NDC)」がUNFCCCに提出されている。また、2015年には、17の持続可能な発展目標(SDGs)からなる2030年アジェンダが採択された。気候変動は最も重要かつ喫緊なSDGの一つである。なぜなら、現在の行動が人類と環境の未来に重大かつ継続的な影響を与えるからである。加えて、気候変動に取り組む行動の多くは、手ごろな価格のクリーンエネルギーへのアクセスの確保や、レジリエントなインフラの構築など、他のSDGの達成にも役立つ。 本サイドイベントは、NDCのもとでの分野別、具体的な気候変動対策や、それらの対策が達成される見込み、また、分野別の対策とSDGsとの協働・相乗効果や対立点などを提示し、今後のNDCの達成、また目標の引き上げに貢献しうる情報の共有と、更なる議論の喚起を行うことを目的としている。 |
キーワード | 自国が決定する約束(NDC)、SDGs、長期戦略 |
登壇者 |
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主催者 |
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基調講演(20分):冊子「気候行動と持続可能な開発目標(SDGs)との相関」の紹介
プレゼンテーション1(15分):変化する社会におけるクリーングロースとイノベーション
プレゼンテーション2(15分):途上国での発展計画策定過程における気候行動とSDGsとのシナジーの構築
パネルディスカッション(40分): 気候行動と持続可能な開発目標(SDGs)との相関を如何に進めていくか
このサイドイベントは、NDCのもとでの分野別、具体的な気候変動対策や、それらの対策が達成される見込み、また、分野別の対策とSDGsとの協働・相乗効果や対立点などを提示し、今後のNDCの達成、また目標の引き上げに貢献しうる情報の共有と、更なる議論の喚起を行うことを目的として開催された。
まず、IGESの甲斐沼美紀子研究顧問が、冊子「気候行動と持続可能な開発目標(SDGs)との相関」を紹介した。この冊子は、NDC目標の引き上げに貢献すると思われる情報の提供を目的として、NDC達成のための具体的な気候変動対策を分野別に取り上げ、それらの対策が達成される見込みとともに分類・整理している。さらに、分野別の対策とSDGsとの関連を調べ、協働・相乗効果や対立などを整理している。現在、各国から提出されているNDCを足し合わせても2℃目標の達成に及ばないことが指摘されており、NDCの野心度を如何に上げていくかが喫緊の課題であるが、甲斐沼研究顧問は、NDCとSDGsとのシナジーを強め、また、各主体による気候行動を奨励していくことが効果的であると述べた。
次に、WIのステファン・レッテンボーマー ディレクターは、加工業における脱炭素化戦略について、資源効率や循環経済のみならずプロセス全体での温室効果ガス排出削減の効率を考えるべきと述べた。また、2℃目標に合致した、気候変動、エネルギー、イノベーション、資源循環と、トレード・成長戦略とを包含した統合的な産業政策が必要であるとし、関係するステークホルダーの関与が不可欠であると述べた。
ボゴール農業大学のリザルディ・ボアー教授は、途上国での発展計画策定時に、開発課題(貧困撲滅や飢餓の克服)が優先されるところ、如何に気候行動とのシナジー・同期をはかり、また、統合的なプロセスとして円滑に実施していくか、インドネシアの森林管理を例に引いて説明した。こうした統合的な措置をとることで、より広範な資金ソースへのアクセスが可能となると述べた。また、ボアー教授は、この過程で関係者との対話を促進していく際に、科学的な知見に基づいたツールを用いることが有効であると述べた。
IDDRIのヤン・ブリアンド交通ワーキンググループ コーディネーターは、IDDRIを中心として、日本、米国、英国、中国など15カ国の研究チームが参画している大幅な炭素排出削減に向けた道筋プロジェクト(DDPP)からの示唆として、エネルギーや技術といった要因以外に、人口・経済発展、人口分布、生活空間とライフスタイルの構成、インフラ、モビリティ・サービス、都市計画などを考えていくべきであると述べた。
また、IGESのエリック・ザスマン持続可能性ガバナンスセンター リサーチリーダーは、野心度を高めていくために、NDCと大気汚染・健康のリンクをより強めていくべきであるとし、インドネシア・バンドンで行われている気候変動と大気汚染への統合的なアプローチや、緩和行動においてよりジェンダーに注目したADBのプロジェクトを紹介し、気候行動とのコベネフィット、マルチベネフィットを追及していくことが不可欠であると述べた。
地球環境戦略研究機関 石川智子
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