2021.11.2 TUE

15:00 - 16:30

2021.11.2

パリ協定の目標達成状況の観測・監視に向けた日本の貢献

環境省

共催者

国立環境研究所、宇宙航空研究開発機構

セミナー概要

パリ協定における排出削減目標の達成状況の監視、特にグローバルストックテイクに対して、日本の衛星観測をはじめとする温室効果ガス関連研究がどのような貢献を行おうとしているか、また行うことが可能かを紹介する。また、海外(米国)からの講演者を招待し、世界で温室効果ガス削減を達成する上での国際的な取り組みと、日本の研究への期待を語っていただく。

登壇者

  • ・伊藤昭彦 国立環境研究所 地球システム領域 室長
    ・小田知宏 米国大学宇宙研究協会 主任研究員
    ・杉本留三 環境省地球環境局国際連携課 室長

    ▼オンライン参加者
    ・三枝信子 国立環境研究所 領域長
    ・須藤洋志 宇宙航空研究開発機構 主任開発員
    ・デイビッド・クリスプ ジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学 上級研究員
    ・プラビール・パトラ 海洋研究開発機構 主任研究員
    ・渡邉正孝 中央大学 教授
    ・吉富萌子 環境省地球環境局総務課脱炭素化イノベーション研究調査室 主査

セッションサマリー

温室効果ガス収支の監視に関する日本の研究活動を紹介し、2023年に予定されているパリ協定のグローバルストックテイクへの貢献について意見交換を行った。司会・モデレータは、米国USRA(大学宇宙研究協会)小田知宏氏が務め、5件の話題提供とパネルディスカッションが行われた。
日本の活動に関する話題提供として、NIES伊藤昭彦氏が「グローバルストックテイクへの貢献を目指す温室効果ガス監視プロジェクト」の標題で、推進費SII-8プロジェクトに関する紹介を行った。各種の大気観測、モデリング、インベントリの複合的手法により信頼性の高い温室効果ガス収支評価をマルチスケールで実現する取組を説明した。続いてJAXA須藤洋志氏より「グローバルストックテイクに向けたGOSATによる10年間の温室効果ガス観測」の標題で、GOSATシリーズによる全球から都市スケールの観測成果が示された。JAMSTECプラビール・パトラ氏は「地域スケールでCO2およびCH4収支の推定と評価に寄与する衛星観測」の標題で、先進的な大気輸送拡散モデルによる衛星データの利用例を紹介した。
海外での取組として、JPL/CaltechのDavid Crisp氏よりOCO-2やTROPOMIをはじめとする海外の人工衛星による温室効果ガス観測とそれを用いた貢献に関する近況を報告し、中央大学・渡邉正孝氏より「モンゴルにおけるGOSATデータを用いたUNFCCC隔年アップデート報告書作成と他国への適用」の標題で、温室効果ガスに加え大気汚染物質の排出量推定に衛星データを適用するモンゴルでの事例紹介が行われた。
パネルディスカッションには講演者及びNIES三枝信子領域長、環境省・吉富萌子主査が参加し、グローバルストックテイクへの貢献に関する議論を行った。会場及びオンラインで寄せられた各話題に対する質問への回答と、2つの設問(科学からの貢献の在り方、社会の変容への期待)に関する意見交換が行われ、温室効果ガスの着実な排出削減達成を支援する信頼性の高いグローバル監視システムの構築ついて有意義な意見交換が行われた。

メッセージや成果

・パリ協定グローバルストックテイクをはじめとする気候変動政策に貢献するため、各種観測とモデルによる温室効果ガス収支の監視体制を、国際協調のもとで構築していく必要がある
・気候の安定化や大気質の改善等多くの問題解決に資するよう、各種対策の前後での排出量の変化を把握し、緩和と適応に関する意志決定を支援する活動が必要である
・人為排出等の重要な量を高分解能で可視化することは、排出削減の動機づけを高め、科学から社会への貢献を加速する上で今後の大きな課題の一つである