2021.11.10 WED

17:00 - 18:30

2021.11.10

CHAdeMO V2G による気候変動への挑戦

CHAdeMO協議会

セミナー概要

電気自動車(EV)のバッテリーを充電だけでなく放電できるようにするのがV2G(Vehicle to Grid)の技術です。再生可能エネルギーで作った電気を貯めて、必要な時に必要な場所で電気を戻すことができます。天候に左右される太陽光や風力といった自然エネルギー源が多くなると、送電や配電のシステムが不安定になり得ますが、V2G技術を使うことでこれを安定させることができます。多くのEVによるV2Gは、より多くの再生可能エネルギーを電力システムに統合するのに十分な「フレキシビリティ」を生み出します。よって、電気自動車の普及による排ガスの削減のみならず、電力供給システム側の温暖化ガスの削減も促進でき、気候変動目標の達成に向けて貢献することができるのです。加えて電気自動車なら、モバイルバッテリーとして、必要されている場所で必要とされている時(例えば停電や自然災害発生時)に電気を供給できますので、近年頻発している異常気象による停電等の社会問題による悪影響の緩和にも役立ちます。
セミナーでは、V2Gの基礎的な情報、技術の規格化や実証試験・ビジネス展開の状況を説明するほか、V2G先進国イギリスの取り組みを紹介します。世界最大の住宅V2G事業となった「スキウルス」プロジェクトの結果等からV2G成功の鍵を探ります。

登壇者

  • ・山辺 知子 CHAdeMO欧州事務所 事務局長
    ・柴田 直孝 CHAdeMO欧州事務所 部長
    ・ジョージィ・ウォードル博士 イノベートUK イノベーション(ZEVインフラ)リード

    ▼オンライン参加者
    ・コナー・マー=マクウィリアムズ カルーザ フレクシビリティ部長

配布資料

セッションサマリー

CHAdeMOはEVと充電器間を繋ぐDC急速充電通信規格で、96か国の45,000台の充電器、200万台以上のEVに採用されている。また、世界初かつ唯一V2G(Vehicle to Grid)を可能とする国際充放電規格でもある。V2G技術により、EVは“mobile energy resource”となり、非常用電源として災害に強い地域づくりにも貢献できる。電力グリッドを安定化させるFlexibilityをV2G技術によりEVから提供すれば、出力が不安定な再生可能エネの導入拡大が可能となる。
現在世界中でCHAdeMOによるV2Gプロジェクトが行われているが、英国政府(Innovate UK)は3,000万ポンドを出資し先駆的に取り組んでいる。V2Gコミュニティーの形成、技術検証、ビジネスモデル実証等様々なプロジェクトを推進しており、得られた様々な教訓を他国と共有していく所存である。
英SCIURUSプロジェクトは世界最大の住宅V2Gプロジェクトで、Kaluza社が広範囲に点在するEVを監視・制御し、住宅、グリッド、卸電力市場等を繋ぎV2Gを効率的に運用することで、EV参加者も金銭的メリットを享受できる。また500万台のEVで最大16GWのFlexibilityを提供すればグリッド運営者は35億ポンド/年の増強費用削減も可能。
CHAdeMO V2Gは、ネットゼロ社会への転換に鍵となる技術であり、気候変動問題の解決に貢献する。EVが十分に普及した社会では、EVが巨大なエネルギー源となってFlexibilityを供給してグリッドを安定化させ、天候により出力が左右される不安定な再生可能エネを更に多く接続できるようになる。近い将来には、現在電力会社がFlexibility供給に利用している火力発電にV2GによるEVが取って代わり、CO2削減及び電力の脱炭素化も実現することが可能となる。
CHAdeMO協議会は今後もV2G技術の発展に取り組み、パイオニアとしてその普及に協力していきたい。

メッセージや成果

重要なCOP26会議の現場から、YouTubeを通じ世界に向けて気候変動問題の解決に貢献するV2G技術について多面的に情報発信することが出来て、有意義であった。
BEIS(英ビジネス・エネルギー・産業戦略省)等各国政府関係者の視聴もあった。