脱炭素社会の実現に向けた新技術開発;台風でも発電可能な世界初の垂直軸型マグナス式風力発電機による緩和・適応分野への挑戦
主催者
- 株式会社チャレナジー
イベント概要
脱炭素社会の実現に向け、株式会社チャレナジーが開発中の次世代風力発電機の技術概要、緩和・適応分野における貢献の可能性を紹介。
近年、世界規模で風力発電市場が急速拡大している中、既存の風力発電機に係る課題は多い。当社は、台風でも発電可能な世界で唯一の垂直軸型マグナス式風力発電機の技術開発を行っている。世界で初めてとなる本技術の実現に向けた技術開発の経緯と今後の可能性について紹介した。本技術は、日本国内だけでなく、世界の台風・サイクロン・ハリケーンの通り道となっている国々の中でも、島嶼地域において最も需要が見込まれる。当社は、現在フィリピン市場を中心に海外展開を行なっているが、中でも基幹送電網から離れた離島のマイクログリッドに注目している。同市場にマグナス風車がもたらす可能性について具体的なケーススタディーを交えながら紹介した。
登壇者
- 清水 敦史 株式会社チャレナジー 取締役CEO
- 水本 穣戸 株式会社チャレナジー チーフストラテジスト
配布資料
セッションサマリー
まず、チャレナジー代表取締役CEOの清水より、チャレナジー事業紹介を行った。
2011年の福島原発事故を受け、「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全な電気を供給する」の理念の元、清水が設立したチャレナジーは、現在国際色豊かなメンバーを構成し、官民様々な団体と事業連携している。
再生可能エネルギーの中でも風力発電分野は、現在世界的に急速に拡大しているが、日本は出遅れている。
一方、日本は風力エネルギーの膨大なポテンシャルを持つが、既存のプロペラ式風力発電機は、強風・乱流による事故、騒音の影響、バードストライクなどの問題が挙げられるため、導入が進んでいない。
このような背景により、チャレナジーは世界初の垂直軸型マグナス式風力発電機を開発し、沖縄県で実施している1kW機の実証実験では、2018年9月の大型台風直撃の中での発電にも成功した。
この技術の強みの一つは、既存風車では稼働できない25m/秒以上の風速でも発電が可能なことである。
2018年の8月より10kW機の実証実験を開始し、2020年には量産を開始、世界に向けて販売を開始する。
この風車を活用した具体的なプロジェクトとして、独立電源、防災・減災システム、マイクログリッドなどへ応用させて事業展開していく予定である。
将来的には、大型機の開発と洋上風車への応用、そして台風エネルギーを利用した水素社会の実現を目指す。
続いて、チーフストラテジストの水本より、具体的なフィリピン国におけるケーススタディを紹介した。
フィリピンは、7,000もの島からなる島嶼国であり、風力発電の導入ポテンシャルも大きいが、年間20以上の台風が襲来するなど、災害大国でもある。
小型ディーゼル発電による脆弱な電力供給に頼らざるを得ない島も、まだ数多く残っており、チャレナジーの風車だけでなく他技術を組み合わせたマイクロハイブリッドシステムの構築を目指している。
具体的なケーススタディーとして、マニワヤ島においてチャレナジーの風車を導入した際に期待できるインパクトは、発電コストは約30%の削減、ディーゼル燃料使用量は約40%、CO2排出削減量は約80トン/年を試算している。
また、現地住民に対して行った社会調査では、台風時にも電力と通信が安定的に供給された場合、住民の幸福度が向上するという結果が得られた。
チャレナジーは、フィリピンで既に国家電力公社及び国営石油公社と協働プロジェクトに関する覚書を締結している。2019年1月には現地にて合弁会社を設立、同年中にはフィリピン1機目の風車の建設も予定している。
①事業紹介
1.会社概要紹介
2.風力発電事業の概要と問題点
3.世界初台風発電機の紹介とその技術仕様
4.10kW機垂直軸型マグナス式風力発電機の実証実験概要
5.製品スケジュールとロードマップ
6.事業展開計画と将来展望
②フィリピンにおけるケーススタディ紹介
1.フィリピン市場概要
2.マイクロハイブリッドグリッドのコンセプト
3.マニワヤ島のケーススタディコンセプト
4.社会経済インパクト検討
5.今後の事業展開計画
その他残したいメッセージやイベントにおける成果
本イベントでは、各国の政府・国際機関関係者の方々に聴講いただき、チャレナジーの取り組みを海外に幅広く知ってもらうができました。
日本政府が打ち出す政策に基づき、気候変動問題に対して各団体が日本の光る技術を用いた具体的解決策を提示できたことは、ジャパンパビリオン全体での大きな成果と考えています。
これからも、日本のものづくりの技術は世界のイノベーションをリードしていくでしょう。
チャレナジーがその先頭を走ることができるよう、今後も引き続き技術開発と事業展開を進めて参ります。