気候リスク型資金と投資の改善によるレジリエントな経済と産業の実現~気候リスクに係る財務情報の公開:利点と欠点
主催者
- 環境省
- 世界適応ネットワーク(GAN)
イベント概要
地球規模でのレジリアントな社会と経済の構築の実現に向けて、いかに効果的に気候リスク情報を財政と投資のメカニズムに導入するかの視点が不可欠である。本セッションではまず、2018年10月17~19日に開催された第6回APANフォーラムでの、社会、生態系システム及び産業をより強靭にするための資金及び投資関連のセッションによるアウトプットを紹介する。また、金融安定理事会(FSB)が「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を設置しており、投資機関や企業が、気候変動影響から受けるリスク情報を公開することを助言している。
会合では、以下の疑問点についてパネルディスカッション形式で意見醸成を行う。
- どのような情報が公開されるべきか
- 気候変動リスクに対するガイダンス化は可能か
- そのガイダンスは自律的または義務的のどちらであるべきか
- 増加される公開情報の利点と欠点
- 気候リスクの公開増加は、むしろ脆弱な国や地域やセクターへの投資減少を招かないか
- 脆弱な国や地域やセクターへの貸しはがしを防ぐ方法は
イベント主催するGANは、適応知見や経験を情報発信する役割を持つ。どう民間セクターを巻き込むか、どう気候リスクに対応した資金のための環境づくりを行うかは主要議題であり、今回の議論の成果は世界の適応関係者へ発信される。
登壇者
- 小野 洋 日本環境省 大臣官房審議官
- バーニー・ディクソン 世界適応ネットワーク(GAN)/世界適応委員会(GCA) 戦略政策局ディレクター
- 吉高 まり 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 環境戦略アドバイザリー部 チーフ環境・社会(ES)ストラテジスト
- クレッグ・デイビス 欧州復興開発銀行 シニアマネジャー(気候変動適応)
- モザハラル・アラム UN Environmentアジア太平洋事務所(APAN事務局) 地域コーディネーター
- ミロスラブ・ペトコフ S&Pグローバル 金融サービス・環境・気候リスク調査、ディレクター
- リシケシュ・ラム・バンダリ フレッチャー法律外交大学院 国際環境資源政策センター
セッションサマリー
GANのバーニー氏から、GANを支援してきた環境省に対する感謝が示されつつ、本セッション概要及びパネラーについて紹介された。昨年COP23のイベントでも、民間セクターの役割をテーマとして扱ったことに触れられた。
APANのアラム氏より、60か国から約1,300名が参加した10月のAPANフォーラムについて報告された。民間セクターからの強い関心とともに、民間投資によるテコ入れやブレンド資金も含め、伝統的/非伝統的双方の気候資金の動員を拡げて、ニーズに応えていくべきであると唱えた。
ERDBのデイビス氏は、企業の「リスク」と同様に「機会」も公開していく必要性に触れた。「機会」を示すためのアプローチや評価手法を通じ、財産や事業における強靭化の利益をより明確にすること、会社単位で気候情報やリスク評価を公開する重要性を強調した。またこれらが既に異なるレベル、方法で進められているため、内容を混同しないよう注意すべきことも述べた。
MUFJの吉高氏は、TCFDが日本でも少しずつ資金機関を中心に理解は広まっているもののまだ浸透しきってないこと、デイビス氏と同様にリスクだけでなくビジネス機会にも焦点をあてることが重要なこと、気候リスクを縮減できるグリーンボンドの可能性についても主張した。
S&Pのペトコフ氏は、気候リスク情報の公開は、格付け機関にとっても重要で実際に情報の活用期待は高まっていること、他方でどう実践的なものに改良していくかが重要であることを述べた。
フレッチャー法科開発スクールのバンダリ氏は、彼と同僚が実施してきた、企業行動及び拡大している/していない投資分野に係る研究を紹介。情報公開は分野によって異なる影響を及ぼし、外部関係者や競争相手によって企業行動が変容すること、業界のリーダーが他社の行動にも影響すること―等を紹介した。
環境省の小野審議官は、閉会挨拶にて、パネラーのコメントに感謝を示し、今後、気候リスクやビジネス機会の公開が企業にますます影響を及ぼしていくこと、それに対しGANやAPANが理解増進と知見共有において大きな役割が期待されることを伝えた。
その他残したいメッセージやイベントにおける成果
- 気候変動適応への注目を集めるため、気候リスク情報の公開メカニズムは重要であり、その認識は広まっている。
- リスクだけでなく「ビジネス機会」の公開も同様に重要である。
- 気候影響コスト及びその利益について、評価測定方法を確立することは緊急な課題である。
- グリーンボンドは、気候リスクや適応を進めるうえで非常に大きな潜在能力を有している。