国内気候政策と国際競争力
主催者
- (公財) 地球環境産業技術研究機構
イベント概要
概要説明(5分)
・Raymond Kopp:米国未来資源研究所(RFF)副社長・シニアフェロー
講演1(10分)気候変動への持続可能な対応のためのNDCの排出削減努力に関する評価
・秋元 圭吾:地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループリーダー・主席研究員
講演2(10分)NDCの排出ギャップを埋めるためのイノベーションと多様化の推進
・Adam Sieminski:アブドラ国王石油調査研究センター(KAPSARC)理事長
講演3(10分)パリ協定の分析の視点:野心と根本的な変化
・Brian Flannery:米国未来資源研究所(RFF)シニアフェロー
講演4(5分)地球温暖化問題におけるビジネスの役割:グローバルバリューチェーンを通じた排出削減の貢献
・手塚 宏之:経団連 国際環境戦略ワーキンググループ座長
講演5(5分)国内政策と国際競争力
・有馬 純:東京大学 教授
ディスカッション・Q&A(30分)
登壇者
- 秋元 圭吾 地球環境産業技術研究機構 (RITE) システム研究グループ グループリーダー・主席研究員 プレゼン資料 (PDF, 527KB)
- Raymond Kopp 米国未来資源研究所 (RFF) 副所長・シニアフェロー
- Brian Flannery 米国未来資源研究所 (RFF) シニアフェロー
- Adam Sieminski アブドラ国王石油調査研究センター (KAPSARC) 理事長
- 有馬 純 東京大学 教授
- 手塚 宏之 経団連 国際環境戦略ワーキンググループ座長
セッションサマリー
- RFFのKopp氏による本セッションの概要紹介の後、各スピーカよりプレゼンテーションを行い、最後にディスカッション(QA)を実施した。
- 秋元氏は、NDCにおける各国の排出削減比較に関するRITE分析を紹介し、限界削減費用は各国で大きく異なり、社会的・政治的制約のためその総コストは最小コストよりも大幅に大きいことを示した。また先進国においてNDCがGDPに負の影響をもたらし炭素リーケージをもたらしうるため、レビュープロセスを通しNDCの協調を図ることが重要であると指摘した。
- Adam Siemenski氏は、現行NDCにおける排出ギャップを埋めるための現実的な手段として低炭素技術の重要性を強調した。またサウジアラビアのNDCと経済影響評価を紹介した。
- Brian Flannery氏は、大規模な変化に向け革新的技術への投資を持続的に行うことが重要かつ必要であると述べた。また削減努力の比較可能性を高めるために多くの主体が参加する透明性の高い枠組みが重要であると述べた。
- 手塚宏之氏は、温暖化と事業からの排出はグローバルな課題であり、グローバルバリューチェーンを通して回避された排出を考慮することが重要であると述べた。
- 有馬純氏は、各国間で異なる政策を鑑みると、世界的に均一な緩和策により技術革新の源泉である国際競争力を低下させないことが重要であると述べた。
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各スピーカ及びパネリストのプレゼン後、コメントや質問を受けた。秋元氏のプレゼンに対して、NDCの測定手法の利用に関する質問がなされ、パリ協定におけるプレッジ&レビューシステムにおいては複数の努力評価指標を考慮する必要があるとの回答がなされた。手塚氏に対しては、高強度鉄鋼の利用が排出削減に与える効用に関して質問がなされ、炭素強度の高い電力の国などで排出削減に有効であるとの回答がなされた。
次に、秋元氏に対して、追加的な炭素価格や税が与えうる影響の評価について質問がなされ、消費者へのリターンや様々な政策を考慮した暗示的炭素価格・税の評価が可能であるとの回答がなされた。
続いて、スピーカーとパネリストにより透明性の高いプロセスによる排出削減努力の比較可能性、自身の知見における炭素価格や税についての議論がなされた。Flannery氏、Sieminski氏、有馬氏からは、国によってエネルギー消費などの状況や政策、努力評価指標が異なり、排出ギャップや知覚ギャップが引き起こされているとの指摘がなされた。有馬氏はコストと便益の間のバランスを取るべきとの指摘を行った。手塚氏は、政策は安価なクリーン技術のイノベーションに集中すべきであり炭素リーケージを回避するには課題は大きいもののグローバルなスキームの構築が必要とのコメントがなされた。
その他残したいメッセージやイベントにおける成果
このセッションでは、NDCsの排出削減努力の公平性は持続的な取り組みのために大変重要であること、また炭素価格付けの必要性は認めつつも、高い炭素価格付けの非現実性について指摘がなされた。また、グローバルバリューチェーン(GVC)で製品ベースでの排出削減の取り組みの重要性や、低炭素技術のイノベーション促進に向けた投資の必要性についても指摘がなされた。