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10:00-11:30

東南アジア諸国における、二国間クレジット制度(JCM)を通じた温室効果ガス(GHG)削減について

独立行政法人 国際協力機構(JICA)インドネシア事務所

イベント概要

インドネシアにおける低炭素型開発のための能力強化を目的としたJICA技術協力では, 低炭素型開発の手段のひとつとして、JCMの制度運営支援を行っている。本イベントでは、日本によるJCMの全体像、及びJCM合意国の中でも先駆的なインドネシアによる取り組みの発表に加え、カンボジアやベトナム等、他の東南アジア諸国における優先的な取り組みとして、JCMによるGHG削減を通じて得られた知見や教訓を共有する。

プログラム

  1. 開会挨拶
    永澤剛 経済産業省(日本)
    Rizal Edwin Manansang 経済担当調整大臣府(インドネシア)
  2. JCMの進捗状況
    長田稔秋 経済産業省(日本)
  3. インドネシアにおけるJCMの経験及びASEAN地域における協力の可能性
    Dicky Edwin Hindarto インドネシアJCM事務局(インドネシア)
  4. コメント&ディスカッション:アセアン諸国でのJCMの経験
    [討論参加者]
    Nguyen Thanh Hai 天然資源・環境省(ベトナム)
    Kamal Uy 環境省(カンボジア)
    Ian Trim エネルギー気候変動省(英国)
    [モデレーター]
    Yuana Rochma Astuti 経済担当調整大臣府(インドネシア)
  5. 質疑応答

セッションサマリー

開会挨拶

日本国経済産業省永澤室長からは、日本のINDCにおいて明確に位置づけられていること、及びJCMがパートナー国を増やしながら着実に発展していることが紹介された。インドネシア国経済担当調整大臣府のEdwin次官補からは、インドネシアJCMの実施状況の説明がなされるとともに、更なる実施促進への意欲が示された。

プレゼンテーション

日本国経済産業省の長田氏からは、JCM発足から現在に至る経緯、JCMとUNFCCC枠組みの関係性、日本のINDCにおける位置づけと意義、及び近年の動きとして日本におけるJCM登録簿の設置・運用について紹介がなされた。また、経済産業省が行っているJCM補助事業の内容及び便益についても説明がなされた。

インドネシアJCM事務局のDicky氏からは、インドネシアJCMの活動概要、及び同国の緩和策及びINDCにおけるJCMの位置づけが紹介されるとともに、現在ASEAN地域で6カ国(全体の60%)がJCM合意国となっており、今後同地域における協力の可能性(JCM制度に関する能力強化、方法論開発、アジア開発銀行等を利用したファイナンシング等)につき説明された。

ディスカッション(モデレーター:インドネシア経済担当調整大臣府Yuana氏)

これらプレゼンテーションを受け、ベトナム天然資源・環境省のHai氏からは、JCMの実施状況、JCMに対する期待(日本の資金的・技術的支援、低炭素技術の導入、国内政策の低炭素化の促進等)、及び課題(比較的新しい制度であり認知度が低いこと、JCMに関する技術的なガイドラインは試行段階であること、クレジットの扱いが未定であること等)が述べられた。カンボジア環境省Uy氏からは、同国におけるJCMの状況とともに、JCMを含めた緩和策共通の課題(データ収集・分析、方法論開発、MRV等の技術的課題、緩和策実施体制の資金的・技術的支援の必要性、関連制度(インベントリ等)を含む関係者への能力強化の必要性等)について紹介がなされた。英国エネルギー・気候変動省のTrim氏からは、炭素市場が現在困難な状況であることに言及をしつつも、JCMのような市場メカニズムの要素を持つ制度に対する期待は依然存在していることが紹介された。また、UNFCCCの元で行われている議論を踏まえ、JCMを含みうる様々な緩和策のための制度について、共通する適切なルール(ダブルカウントの排除等)の設定、及び透明性確保のためこれら制度を統括する国際管理体制の構築が求められるとの考えが示された。

Q&Aセッション

Q(ベトナム(政府関係者)):緩和策だけでなく、適応策もJCM案件として採用される可能性はあるか。
A(長田氏):適応策支援の必要性が増加していることは日本政府も強く認識しており、適応策はJCMとは別に支援策が存在している。JCMとの関係性では、JCMは一義的にはGHG削減のための制度であるため、GHGの削減が実現する必要がある。しかしながら、適応策としてのコベネフィットがあるものを妨げるものではない。

Q(ベトナム(政府関係者)):インドネシアJCMの成功などから導かれる、最も重要な教訓は何か。
A(Dicky氏):一つ目は、両国のJCMプロジェクト事業者間で、真の相互理解(コミュニケーション)を深めるということが重要である。JCMの最大の課題の一つはコミュニケーションと理解している。また二つ目は国内関連政策とJCM(プロジェクト)の連携を図るということである。
A(Hai氏):コミュニケーションが重要という点について同意する。ベトナムの案件数は少ないが、特に技術の質と、その価格としていくらが妥当か、という点については、JCMプロジェクト事業者間で大きな問題となる可能性があり、十分なコミュニケーションが求められる。

キーメッセージ

  • JCMは日本のINDCにも明記され、インドネシアINDCにおける炭素市場の例として想定される等、国内の気候変動緩和策としても認識されている。
  • JCMは二国間合意に基づくものではあるが、基本的な仕組みは同じであり、ASEAN地域にて連携の余地(JCM制度に関する能力強化、方法論開発等)がある。
  • UNFCCCにおける議論としても、JCMを含む様々な制度に対し、制度共通のルール策定や、国際的な管理体制の重要性が指摘されている。

イベント風景

報告者

JICAインドネシア事務所(インドネシア国低炭素型開発のためのキャパシティ・ディベロップメント支援プロジェクト)長谷代子 市原純