日尼の低炭素型開発のための能力強化の取組み(二国間クレジット制度(JCM))について
独立行政法人 国際協力機構(JICA)インドネシア事務所
イベント概要
インドネシアにおける低炭素型開発のための能力強化を目的とした技術協力では、低炭素型開発の手段のひとつとして、二国間クレジット制度(JCM)の制度運営支援を行っている。本イベントでは、世界最初のJCM登録案件を有するインドネシアでのJCMの取組・実施状況およびこれまでの成果を紹介した上で、本技術協力を通じてこれまでに得られた制度における技術的課題(他の緩和策との連携・調整等の政策的課題、及びその対応策の検討等)を含むインドネシアの経験を紹介する(その結果、他国のJCMや低炭素開発の取組を促進することを目指す)。
プログラム
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- 開会挨拶
- Musdhalifah Machmud 経済担当調整大臣府(インドネシア)
水野勇史 環境省(日本)
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- インドネシアにおけるJCMの現状
- Rizal Edwin Manansang 経済担当調整大臣府(インドネシア)
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- インドネシアの低炭素開発に関するJICAの技術協力及びインドネシアのJCMの課題
- 市原純 国際協力機構(JICA)(インドネシア国低炭素型開発のためのキャパシティ・ディベロップメント支援プロジェクト)(日本)
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- インドネシアにおけるJCMプロジェクト
- 矢崎慎介 兼松株式会社(日本)
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- コメント&ディスカッション
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- [討論参加者]
- Medrilzam 国家開発企画庁(インドネシア)
Jeff Swartz 国際排出量取引協会(IETA)ベルギー支部(ベルギー)
- [モデレーター]
- Dicky Edwin Hindarto インドネシアJCM事務局(インドネシア)
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- 質疑応答
セッションサマリー
開会挨拶
インドネシア国経済担当調整大臣府のMusdhalifah次官からは、Joko Widodo大統領のスピーチでも言及されたインドネシアのINDC上の削減目標(2030年までに29%から41%)、および同目標達成に対するJCMの貢献への期待が述べられた。日本国環境省水野企画官からは、JCMの歩みの紹介とともに、初期段階よりともにJCMの取り組みをリードしてきたインドネシア国に対する敬意と感謝が表された。
プレゼンテーションおよびディスカッション(モデレーター:インドネシアJCM事務局長Dicky氏)
インドネシア国経済担当調整大臣府のEdwin氏からは、2010年からのインドネシアJCMの歴史、政府内実施体制(合同委員会等)、これまでに投入された資金の規模、案件・方法論件数、近年の動きとして都市間連携、持続可能性評価手続き等、インドネシアのJCMの進捗状況が網羅的に紹介された。
JICAの市原氏からは、それらインドネシアJCMを支援するJICA-CMEAプロジェクトの進捗、成果、教訓について紹介がなされた。また、CDMとの比較も交えつつ、今後の課題としてインドネシア国内におけるファイナンスの促進や、同国気候変動緩和関連政策との整合性確保や関係者の更なる能力強化等が提示された。
兼松株式会社の矢崎氏からは、インドネシアにおける案件事例を実施する事業者からの経験として、「製紙工場における省エネ型段ボール古紙処理システムの導入」及び初のREDD+実証事業案件である「ボアレモ県における焼畑耕作の抑制によるREDD+」について紹介がなされた。
これらプレゼンテーションを受け、インドネシア国家開発企画庁のMedrilzam氏からは、JCMの活動とINDCとの関係性につき、緩和策としての側面だけでなく、気候変動対策の中でも重要なファイナンスのツールとしての側面に対する期待する旨が述べられた。また、インドネシア国内の他の気候変動緩和政策との整合性確保が課題である点に同意が示された。また、IETAのSwartz氏からは、市場メカニズムに関する国際交渉の動きは遅く、全体的な取引も低迷している一方で、INDCの8割近くが市場メカニズムの活用を提示していること、及び、欧州だけでなく中国や韓国のキャップ&トレード型排出量取引制度の導入等、アジア地域でも活発な動きがみられることが紹介され、その中でも着実な歩みを進めるインドネシアJCMの活動には期待している旨が述べられた。
Q&Aセッション
Q(インドネシア(政府関係者)):森林等の活動がそうであるように、JCMにおいても緩和策と適応策双方に資するような案件があり得るか。
A(Medrilzam氏):特に土地セクターの活動においては可能性が有り得る。緩和策と適応策のリンケージは重要である。
A(Edwin氏):持続可能性評価(社会環境影響を含む)の実施とも併せ今後の検討に拠る。
A(矢崎氏):コミュニティ、地方、州とスケールが大きくなってくるにつれ、こうした緩和策と適応策の双方に資する対応が視野に入ってくると考える。
Q(東ティモール(政府関係者)):矢崎氏紹介のREDD+案件に関し、カカオ栽培の導入と森林劣化防止との関係性は。
A(矢崎氏):本案件では、農家に対しカカオ栽培のノウハウを移転し、バリューチェーンを構築することで、焼き畑が必要なとうもろこし栽培以外のオプションを提示することで森林劣化防止に資する。
Q(英国(政府関係者)):CDMとJCMの比較、およびCDM等の実施の課題のさらなる詳細について知りたい。
A(市原氏):両者の比較や、CDM実施の課題などについてはいくつか報告がなされており、関連文献を参照されたい。今後も更なる分析が有用である。
キーメッセージ
- インドネシアのJCMは、JCM合意国の中でも、新たな制度文書の構築、方法論数、案件数、事務局による普及啓発活動、持続可能性を含むモニタリング・評価活動等において、先駆的な取り組みを行っており、さらなる展開、案件の実施が期待される。
- インドネシアJCMの下で行われる案件が抱える潜在的な課題の一つは、ファイナンスである。インドネシアのINCDでも、JCMを含む市場メカニズムの重要性は述べられているが、実際に資金ソースを特定し、ファイナンスを確保・促進することは今後の課題である。
- インドネシア国内では、様々な気候変動政策が存在している。今後のインドネシアJCMのさらなる発展に向け、JCMと他の国内気候変動政策と連携強化と、政策間の整合性確保が求められる。
イベント風景
報告者
JICAインドネシア事務所(インドネシア国低炭素型開発のためのキャパシティ・ディベロップメント支援プロジェクト) 市原純 長谷代子