排出削減努力の国際衡平性指標と約束草案の評価
-透明性、政策審査、努力レベル-
公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)、米国未来資源研究所(RFF)、エニ・エンリコ・マッテイ財団(FEEM)
イベント概要
RITE は米国および欧州研究者との共同研究において、自主的に決定する約束草案(INDC)に対する評価(事前評価)と目標の対象期間終了後の評価(事後評価)に関する分析手法を提案してきている。イベントでは、国際衡平性指標の重要性及び定量的に評価するモデルフレームワークを紹介するとともに、これまでに提出された約束草案を提案の各種指標を用いたフレームワークによって評価した結果を紹介する。
プログラム
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- 透明性、政策審査、努力レベル:約束草案の評価と比較
- Raymond Kopp 米国未来資源研究所(RFF)エネルギー・気候経済センター シニアフェロー兼共同センター長
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- 約束草案の評価と比較:効率性vs公平性
- Carlo Carraro ベニス大学教授、エニ・エンリコ・マッテイ財団(FEEM)気候変動と持続可能な発展プログラム コーディネーター
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- 約束草案の削減努力のRITE評価と世界排出量見通し
- 秋元圭吾 地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループリーダー・主席研究員
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- 約束草案のモデル評価
- Massimo Tavoni ミラノ大学准教授、エニ・エンリコ・マッテイ財団(FEEM)気候変動と持続可能な発展プログラム 副コーディネーター
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- Q&A
セッションサマリー
本セッションは、約束草案の排出削減努力に関する評価をテーマに開催した。
最初にRay Kopp氏が約束草案の評価と比較に関する方法など紹介し、各国約束草案の排出削減努力は、比較可能であり、計測可能であり、一般的な手法であることが重要であることを説明。
次の講演者のCario Carraro氏は、3つのシンプルな指標(GHG排出削減量、2℃シナリオとの一貫性、GDP当たりの削減コスト)による約束草案の比較結果を紹介。
次の秋元圭吾氏はRITEによる7つの指標による約束草案の評価結果を紹介。指標は、排出削減量(ベース年比較、ベースライン比較)、人口当たりの排出量、経済的なCO2原単位、GDP当たりのCO2削減コスト、限界削減コスト、電力価格とし、DNE+モデルで評価。その結果、スイス、日本、EUの約束草案は野心的である一方、中国、インドの約束草案はBAUとほぼ同じとの評価であった。
最後のMassimo Tavoni氏は、FEEMのWITCHモデルによる評価結果を紹介。効果的であり効率的であり、衡平な評価のため、約束草案による世界的な電力量、2030年の再生可能エネルギー量、炭素価格を分析。結果、国ごとに大きな違いがあり、また強化される必要はあるが、比較的公平であり十分な努力を示した。
Q&Aでは、会場からいくつかの質問とコメントがあった。
成果の1つとして、中国とインドの努力が一番低いという結果が示されており、このようなレビュープロセスは、すべての国が各自の約束草案を強化するためのPDCAをまわす議論をサポートでき得る。また、インドに関しては、国のサイズとして、ほとんど大陸で、集約された約束草案の限界削減費用が地方の間に生じ得る費用や努力に関する大きな格差を隠す可能性がある点に留意する必要がある、などのコメントがあった。
キーメッセージ
- 約束草案の排出削減努力の国際的な公平性と衡平性を測る単独の絶対指標はない。
- しかし、複数の意味がある指標によって約束草案の公平性と衡平性を評価することは、INDCsの今後の改定において不可欠。
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DNE21+とWITCHモデルに基づく評価は、
- 約束草案は、2度シナリオとギャップがあり、2℃目標のためには2030年もしくはそれ以降の排出削減の強化が必要。
- 限界削減費用は国間で大きなギャップがあり、カーボンリーケージのリスクがある。
- 発展途上国と先進諸国の間での負担に関しては、経済力の差を含めて考えれば比較的公平とも考えられる。
イベント風景
報告者
地球環境産業技術研究機構(RITE) 中神保秀、Bianka Shoai Tehrani