先進的技術を活用した気候変動対策:JCMスキームの活用とJCMプロジェクトの開発
公益財団法人 地球環境センター(GEC)、公益財団法人 関西経済連合会、一般社団法人 海外環境協力センター(OECC)
イベント概要
先進的な技術の適用・普及により、世界全体の低炭素化に貢献することが、日本が国際的な気候変動対策に貢献する一つの方法であり、このことは日本政府による「攻めの地球温暖化外交戦略」でも謳われている。また、国内民間事業者にとっても、先進的な技術の海外展開を地球温暖化対策の文脈で広められることは、ビジネスチャンスになるとも言える。
そこで、本イベントでは、関西を中心とした民間事業者が有する先進的な技術の紹介と、二国間クレジット制度(JCM)を活用した先進技術のベトナム等への海外普及展開、JCMプロジェクトとしてのMRV(方法論適用)によるクレジット化について紹介・議論する。また、JCMに係る頻出の質問に対して、新メカニズム情報プラットフォーム事務局より最新情報を提供する。
プログラム
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- 開会挨拶
- 佐藤廣士 関西経済連合会副会長、株式会社神戸製鋼所 代表取締役会長
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- 気候変動緩和と適応に関する関西経済界の貢献
- 古川実 関西経済連合会 地球環境・エネルギー委員長、日立造船株式会社 代表取締役会長兼CEO
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- 二国間クレジット制度(JCM)に関するGECの貢献
- 坂内修 主任 公益財団法人地球環境センター(GEC)
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- ベトナムにおける二国間クレジット制度(JCM)
- Ms. Nguyen Thanh Hai, JCM 事務局 ベトナム天然資源環境省(MONRE)
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- 二国間クレジット制度(JCM)に関するFAQ
- 小柳百合子 研究員 一般社団法人海外環境協力センター(OECC)
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- 二国間クレジット制度(JCM)を通じた低炭素技術の普及
- 伊藤貴輝 市場メカニズム室室長補佐 環境省
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- 質疑応答
セッションサマリー
関西経済連合会副会長の佐藤氏より開会挨拶があり、関西の経済界が気候変動問題の緩和と適応の両面において取り組んでいることが紹介された。
関西経済連合会地球環境・エネルギー委員長の古川氏より講演があり、関西地域の「環境」「防災」分野の強みが各国の気候変動問題へ貢献可能であると強調され、環境技術や製品の概要を取りまとめたリーフレットについて紹介された。また二国間クレジット制度(JCM)のベトナムにおける実証事例としてホーチミン市内の卸売市場におけるバイオガス回収・熱供給事業について紹介された。
GECの坂内氏より講演があり、GECが取り組んでいるJCM案件組成事業及びJCM実現可能性調査とJCM都市間連携事業について、事業概要とベトナムで調査実施中の具体的な案件の概要が説明された。
ベトナム天然資源環境省のHai氏より講演があり、ベトナムにおけるJCM制度とプロジェクトの実施状況について説明された。
OECCの小柳氏より講演があり、新メカニズム情報プラットフォームで公表しているJCMに関するFAQ(URL: http://www.mmechanisms.org/initiatives/faq.html)について紹介された。JCMの登録申請から実際の登録までに係る期間、ネット削減、発行されたJCMクレジットの配分、2020年以降のJCMの取扱い、ダブルカウントの防止、WTO規則との関係について回答が示された。
環境省の伊藤室長補佐より講演があり、JCM制度とJCM設備補助事業の概要説明があり、JCM制度が優れた低炭素技術の普及を促進し具体的な排出削減プロジェクトの実施につながっていることが説明された。
質疑応答ではベトナムの国内制度とJCMとの関連、ベトナムにおける対象分野の優先順位、JCMパートナー国の目標数、JCMと他のメカニズムとの関係について聴衆から質問があり、各講演者から回答が行われた。
キーメッセージ
- 途上国においてはJCMパートナー国となることがゴールではない。当初の目的である16か国との署名を前倒しで達成したが、今後はプロジェクトを開発し排出削減につなげることが大事であり、JCMで2030年までに5,000万~1億t-CO2の削減を見込む。
- 優れた低炭素技術の適用・普及を進め世界全体の低炭素化を進めるためには、技術を持つ民間企業との協業が不可欠である。
- ベトナム国では今年初めてJCMプロジェクトが登録されており、今後は更に多くのJCMプロジェクトが実施されクレジットが発行されることが期待される。
イベント風景
報告者
公益財団法人地球環境センター 坂内修
一般社団法人海外環境協力センター 小柳百合子