アジアの低炭素社会実現に向けて-アジアと日本、未来志向の協働
みずほ情報総研株式会社、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)、京都大学、国立研究開発法人 国立環境研究所(NIES)、株式会社イー・コンザル
イベント概要
COP21では、各国が約束草案(INDC)を提出することが期待されている。しかしその総量を足し合わせても、2℃以下での気候安定化には十分な削減とはなっていないと推定されている。今後2020年からの実行に向けて、各国ともさらにINDCを強化していかねばならない。そのためには、INDC を定期的に見直しながら強化していくサイクルが必要であり、AIMのような統合評価モデルでの政策構築がますます有効と考えられる。以上を踏まえて、COP21にてアジアにおけるAIM利用の有効性についてのサイドイベントを開催する。
サイドイベントでは、まず、基調講演「アジアの中のAIM」にて、AIM研究チームから、20年以上にわたる日本のアジアへの貢献と、AIMが政策検討に用いられる意義について説明を行う。次に、各国のAIM研究者から、各国のAIMの検討結果と、特に温室効果ガスの削減ポテンシャルについて説明を行う。このように、アジアの研究者自らが、自らのモデルについて発信することは、温室効果ガス削減におけるアジアの重要性を踏まえてきわめてメッセージの高いものであり、かつ、日本が今まで20年以上にわたり続けてきた日本型のパッケージ支援を世界に向けて喧伝する格好の機会となると思われる。本サイドイベントは日本国環境省の委託事業の一環として、環境省の支援により実施する。
プログラム
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- 基調講演「アジアの中のAIM」
- 藤野純一 国立環境研究所 主任研究員
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- 講演
- Prof. Ho Chin Siong マレーシア工科大学 教授(マレーシア)
Prof. Rizaldi Boer ボゴール農業大学 教授(インドネシア)
Dr. Nguyen Tung Lam ベトナム天然資源環境相戦略計画研究所 統合研究局長(ベトナム)
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- 総括
- P. R. Shukla IPCC第三作業部会 共同議長(インド)
セッションサマリー
はじめに、NIESの藤野純一博士が、基調講演「アジアの中のAIM」を行い、20年以上にわたる日本のアジアへの貢献と、AIMが政策検討に用いられる意義について説明を行った。同博士は、まずAIMが、地域における統合評価のプロセスを発展・促進するために開発された大規模なコンピュータシミュレーションモデルであるとともに、1994年以降アジアの様々な国と地域における低炭素社会シナリオ・ロードマップの策定を行うなど国際協力を進めてきており、現在400名以上の研究者を擁する交流ネットワークに発展していることを述べた。
こうした文脈のもと、同博士は、環境省からの委託を受けて実施している低炭素社会シナリオ・ロードマップの策定事業において、AIMをカスタマイズして、対象国・地域ごとにごとに最適な低炭素社会シナリオ・ロードマップを策定し、これをもとに政策研究対話を実施していることを紹介した。また、低炭素社会計画の策定から進捗管理の方法論をまとめたPDCAガイドブックを作成し、また、東京都との協働により、業務部門のGHG排出削減のための制度導入に向けた知見提供・研修を実施するなど、低炭素社会実現に向けた制度構築の支援を行ってきていると述べた。
マレーシア工科大学(UTM)のHo Chin Siong教授は、イスカンダール・マレーシアを対象に低炭素社会ブループリント・ロードマップの策定を行ったことを紹介した。また、低炭素研究をいかに政策立案や実際の行動につなげていくか(科学から行動へ)について、これを進めていく重要な要素としてリーダーのコミットメントとサポートを取り付けること、ローカルコミュニティや関連するステークホルダーを巻き込んでいくことが鍵であると述べた。
ボゴール農業大学のRizaldi Boer教授は、3つのシナリオによる農業・森林・その他の土地利用(AFOLU)モデルの検討結果を紹介した。同教授は、低炭素発展の実現に向けて、研究コミュニティによるツールやモデルの開発、政府や他のステークホルダーとの対話、政策形成や発展計画の策定が相互にインプット・フィードバックしながら実施されるべきであると述べた。
ベトナム天然資源環境戦略研究所(ISPONRE)のNguyen Tung Lam博士は、AIMチームが本年度ダナンとホーチミン(都市レベル)を対象として低炭素社会シナリオ策定に着手していること、また、この二地域を対象として、意見交換・情報交換のための対話会合を実施あるいは実施予定であることに触れ、ベトナムにおいても都市を対象とした取組みが進められてきていることを紹介した。
また、本セッションの議長・ファシリテーターを務めたP.R.Shukla教授は、今後各国ともさらにNDCを強化していかねばならず、そのためにはNDC を定期的に見直しながら強化していくサイクルが必要であり、AIMのような統合評価モデルでの政策構築がますます有効と考えられること、AIMチームが現在アジアのいろいろな国において現地の研究者とともに活動を行ってきており、このような機会にアジアの研究者自らが、自らのモデルについて発信することは、温室効果ガス削減におけるアジアの重要性を踏まえて極めて時宜を得たものであることを強調した。同教授はまた、日本がアジアに向けて今まで20年以上にわたり続けてきた日本型のパッケージ支援に謝意を表明した。
キーメッセージ
- 今後各国ともさらにNDCを強化していかねばならず、そのためにはNDC を定期的に見直しながら強化していくサイクルが必要であり、AIMのような統合評価モデルでの政策構築がますます有効と考えられる。
- AIMチームが現在アジアのいろいろな国において現地の研究者とともに活動を行ってきており、このような機会にアジアの研究者自らが、自らのモデルについて発信することは、温室効果ガス削減におけるアジアの重要性を踏まえて極めて時宜を得たものである。
イベント風景
報告者
地球環境戦略研究機関 石川智子