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低需要シナリオに関する国際ワークショップ

(C) 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, 2018

国際的な研究者が会し、低エネルギー需要社会に向けた機会および課題を検討

1.概要:国際ワークショップ開催の目的

パリ協定でも大幅な排出削減が求められている。一方、2℃や1.5℃目標実現のためのこれまでのモデル分析では、2100年の限界削減費用が1000 $/tCO2前後と推計され、そして二酸化炭素回収貯留付きバイオエネルギー(BECCS)に大きく依存するような対策がほとんどである。2℃や1.5℃目標は極めて達成が難しい目標である一方、エネルギー需要サイドの大きな革新の可能性についても指摘されてきている。効用(サービス需要)を下げずにエネルギー需要量を下げることが可能な社会変化の可能性について検討を深めることは極めて重要である。そこで公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)は 、国際的な研究機関であるInternational Institute for Applied Systems Analysis(IIASA)と共催で、国内外から幅広い研究分野の研究者を招聘し、低エネルギー需要社会実現の機会と課題を探ることを目的としてワークショップを開催した。

2. 日時

2018年9月25~27日

3. 場所

奈良 東大寺総合文化センター

4. 発表内容及び議論のポイント

エネルギー需要に関して、参加者から以下の紹介と、全体による議論が行われた。

  • 生活関連の指標(幸福、適切な生活水準、時間利用、スマート社会)
  • エネルギー関連行動の分析(社会学・心理学的分析、経済分析)
  • 社会変化の個別事例紹介(都市モビリティのシェア化、住宅・建築物、産業、消費者向け物品・サービス)
  • データ関連(利用可能性、ミクロデータによるモデリング、分析課題)

議論のポイントは以下の通り。

【全体】

  • システムモデリング、政策分析、シナリオ研究、技術革新などから低エネルギーサービスのへ転換や排出削減における大きなポテンシャルがあることが示された。
  • 人の需要を満たすことが webエネルギーの最終目的であり、エネルギー需要・サービスはその中間財である。この点で、需要側の技術や行動に軸を置いた研究が必要である。大規模なシステム変化の分析に関してはデータの利用可能性が問題となる。

【エネルギー需要の理解】

  • エネルギー需要に関する単一の統合的モデルはなく、エネルギーの技術・経済・社会科学的分析を様々な手法・フレームワークで、幅広いスケールで行うべきである。
  • 時間使用と時間の価値はエネルギー需要の重要な分析視点である。人間行動の変化に関するシナリオ分析にも有用となる。
  • 低価格のエネルギーサービス実現により、価格弾力性の想定や所得増加の効果、リバウンドなど、分析に課題が生じる。
  • Society5.0に代表されるようなスマート、デジタル、コネクテッド、協調システムは将来のエネルギーサービスに重要な要素となる。
  • 自動化、仕事の変化、人口動態、都市化、不平等など、従来の分析に組み込まれていないマクロレベルの動向がエネルギー需要に影響を与える。
  • エネルギーサービス転換は物質、土地などの資源に大きく影響する。
  • 欧州では個人の幸福にとって環境価値(CO2削減)が金銭価値を上回るとの事例があり、心理学的インプリケーションの考慮が有効となり得る。

【データ】

  • より詳細なデータが利用可能となりつつあり、エネルギー需要の理解に有用であるがデータアクセスが課題となる。データのグローバルな収集・共有が重要である。
  • 行動、心理、社会学的要素はエネルギー需要に影響するが観測できないものであり、システマティックなデータ収集が必要となる。
  • 新しいエネルギーサービスに関する観測データをグローバルで収集・共有することが重要である。
  • ビッグデータ分析は社会的・文化的異質性の考慮が必要となる。

【手法と分析】

  • 消費者行動などの需要側の変化は分析・モデル化が可能である。
  • エネルギー需要分析手法は広範であり、これらを統合あるいはリンクさせた分析やそれぞれの比較分析を進めるべきである。

【モデリング】

  • 特定のエネルギー需要側のモデル化・分析がなされている一方で、統合評価モデルでは需要側のモデル化は簡略であり、全体を統合した新たなモデル分析を志向していくことが重要性である。

5.総括

ワークショップを通してこれまでにない高レベルの学際的研究コミュニティの基礎が形成された。

各参加者からの発表では、人間活動に関する指標(生活水準、生活時間、スマート社会)、社会的側面、心理学、経済分析、都市モビリティ、建築物、産業、データとその分析、モデリングアプローチなど、エネルギー需要に関連する広範なトピックスが提供され、参加者に数多くの新しい視点をもたらした。IT等情報技術の進展とその幅広い波及に伴って期待できる運輸におけるカーシェア、ライドシェアによる低エネルギー需要化の機会、食料需給全体における様々な低GHG排出の機会等についても議論がなされた。一方で、リバウンドの可能性、消費者の多様性などについても指摘がなされた。

今後にむけて、様々な科学分野コミュニティや政策決定者、産業界、市民社会による定期的意見交換フォーラム'rethinking energy demand’を構築し継続協議することが合意された。

タラノア対話の「質問3―どうやって行くのか」の探索機会となった。

参加者リスト

firstname lastname affiliation country
Skip Laitner ACEEE USA
Taishi Sugiyama Canon Institute Japan
Linda Steg Univ. of Groningen Netherlands
Sebonia Matthew Global Climate Capital USA/Myanmar
Amulf Grubler IIA SA Austria
Narasimha Rao IIA SA Austria/USA
Keywan Riahi IIA SA Austria
Bas (tien) van Ruijven IIA SA Austria/Netherlands
Jari Kauppila ITF/OECD France/Finland
Sumie Nakayama J-Power Japan
Joyashree Roy Asian hstitute of Technology Thailand
Yoshiyuki Shimoda Osaka Univ. Japan
Mithra Moezzi Portland State Univ. USA
Kenji Yamaji RITE Japan
Keigo Akimoto RITE Japan
Hiroyasu Horio RITE Japan
Fuminori Sano RITE Japan
Ayami Hayashi RITE Japan
Keii Gi RITE Japan
Charlie Wilson Tyndall Centre for Climate Change Research UK
Diana Urge-Vorsatz Center for Climate Change and Sustainable Energy Policy Hungary

Skype参加者

firstname lastname affiliation country
Loren Lutzenhiser Portland State Univ. USA
Halina Brown Clark Univ. USA
Julia Steinberger Leeds Univ. UK
Ines Azevedo Carnegie Mellon Univ. USA
Felix Creutzig Mercator Research inst. Germany