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  • 国際協力の今と未来

途上国における国家温室効果ガスインベントリ作成支援からの提言:強化された透明性枠組みの構築に向けて

主催者

  • 国際協力機構(JICA)

イベント概要

JICAは、インドネシア・ベトナムにおいて国家温室効果ガス(GHG)インベントリ作成能力強化のための技術協力プロジェクトを実施し、現在もモンゴル・パプアニューギニアで同様の支援を実施中である。本イベントでは、途上国における国家GHGインベントリ作成支援のニーズとJICAのこれまでの支援・経験を踏まえた提言を共有する。2015年に採択されたパリ協定のもと「強化された透明性枠組み」の構築が目指される中、全ての締約国に対して定期的なGHGインベントリの提出が義務付けられた。JICAが支援を行っているモンゴル・PNGの参加を得て、途上国におけるGHGインベントリ作成支援に係る論点・教訓を議論する。

登壇者

配布資料

セッションサマリー

JICAは、モンゴルにおいて、「国家温室効果ガスインベントリシステム構築及び能力強化プロジェクト」を実施中である。当プロジェクトのカウンターパートであるモンゴル環境気候基金(ECF)のTegi氏は、主要な課題が特定されたエネルギー分野と土地利用分野をはじめとするインベントリ全般の改善について、JICAの技術協力プロジェクトによる支援も受けながら行っており、当プロジェクトの概要・進捗について説明した。JICAは、「PNGにおける持続可能なGHGインベントリシステム構築のための能力強化プロジェクト」を2017年10月から実施している。PNGの当技術協力プロジェクトのカウンターパートである気候変動開発庁(CCDA)のRungol氏は、同国のGHGインベントリ策定のプロセス・体制、第1回隔年報告書(1st Biennial Update Report; BUR1)策定の進捗について説明し、データ収集・インベントリ改善・ICA対策に関する能力向上を目指し実施中のJICAプロジェクトの概要についても紹介した。同国は、JICA支援の成果も含まれるBUR1を2018年末までにUNFCCC事務局へ提出予定と説明した。JICA玉井専門家は、透明性枠組のもとでの途上国による報告について、その提出頻度・時系列一貫性・正確性について課題があると指摘し、JICAによるGHGインベントリ支援はBURが提案されるCOP15以前からインドネシア・ベトナムで実施してきたが、現在実施中のモンゴル・PNGにおける支援ではこれらの課題に対応する活動を含んでいると説明した。
つづく、パネルディスカッションは、JICA川西専門員がモデレーターを務め、GHGインベントリ策定の持続性、NDCとGHGインベントリの関係等について意見交換が行われた。GHGインベントリ策定の持続性について、途上国の組織体制の脆弱性は気候変動分野には限らないが各国が努力を行っている点、国家GHGインベントリ報告書(NIR)の記述を詳細化することは透明性向上だけでなく各国の組織記憶の向上にも貢献する点、来年承認されるIPCC 2019年ガイドラインにはデータ収集や国内体制に係る助言が含まれているので活用が期待される点が挙げられた。NDCとGHGインベントリの関係について、NDCの将来推計はGHGインベントリに基づいているが目標値は対策レベルなので結びつきはまだ完全ではない点、茅恒等式等を用いた要因分析を行うことでGHGインベントリはNDCの進捗分析に活用できるので途上国でも実践して欲しい点、排出係数に効く種類の緩和策については(Country Specific Emission Factor; CSEF)の策定によって進捗管理を直接行える点、統計データの信頼性はGHGインベントリにとどまらず大きな課題でありJICAも技術協力プロジェクトの一環としてエネルギー統計支援等を行っている点が挙げられた。

その他残したいメッセージやイベントにおける成果

  • 国家GHGインベントリの持続性は、インベントリ策定に係る国内体制の強化、報告書の詳細化等を通じた組織としての記憶の強化によって向上を図るべき。
  • 国家GHGインベントリの正確性は、インベントリ策定に必要な統計の改善と、緩和策の定量化を含めた国独自の排出係数の策定によって向上する事が期待出来る。
  • 今次COPでは透明性枠組の細則を決める上で途上国の国家GHGインベントリの質の継続的改善の必要性への関心が高まっている。JICAの国家GHGインベントリ策定支援の経験・知見が、途上国のインベントリを含む報告の改善とそのためのキャパビルの在り方の議論に貢献することが期待される。
登壇者写真
パネルディスカッション写真

2018.12.08のタイムテーブル

  • 日本の目指す脱炭素社会
  • 技術革新
  • 国際協力の今と未来

海洋と気候の連鎖 ―海洋・気候行動計画(ROCA)の主要課題に取り組む

笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI-SPF)/グローバル・オーシャン・フォーラム(GOF)/オセアノ・アズール財団/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC-UNESCO)